
高齢になっても、自分の歯でおいしく食事を楽しみたいと思う方は多いでしょう。「年を取ったら歯が悪くなるのは仕方ない」とあきらめている方もいるかもしれませんが、それは必ずしも正しくありません。適切なケアを続けることで、年齢を重ねても歯とお口の健康を守ることは十分可能です。今回は、ぜひ知っておいていただきたいポイントをまとめてご紹介します。
高齢になるとお口はどう変わる?

日本人の残存歯数は年齢とともに減少し、70歳で平均約11本、80歳では平均約4本とされています。これは年齢だけが原因ではなく、日頃のケア次第で大きく変わります。
加齢によるお口の主な変化は3つです。
まず歯の摩耗。長年使い続けることで歯は少しずつすり減り、しみる症状や食べる力の低下につながることがあります。
次に歯根の露出。歯ぐきが下がることで根元が表に出てきて、やわらかい組織が虫歯になりやすくなります。
そしてエナメル質・象牙質の変化により、詰め物の周囲や露出した歯根部分で歯が割れたり欠けたりするリスクも高まります。
また、高齢になると唾液の分泌量が減少しやすくなります。唾液はお口の中を清潔に保ち、食べ物の消化を助けるなど、複数の重要な働きをしています。量が減ると細菌が増えやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが上がります。
お口の乾燥が気になる方は、こまめな水分補給やうがい・洗口剤の活用が効果的です。よく噛む食習慣も唾液の分泌を促すのに有効ですので、ぜひ意識してみてください。
オーラルフレイルとは?
こうした変化と深く関わっているのが「オーラルフレイル」という概念です。加齢に伴うお口の機能の衰えのことで、滑舌の悪化・食べこぼし・食事中のむせ・口の乾燥・やわらかいものばかり食べるようになる、といった変化として現れます。
思い当たる方は、簡単にセルフチェックしてみましょう。
- 以前より滑舌が悪くなった
- 食事中によくむせる
- 食べこぼしが増えた
- 口の乾燥が気になる
こうしたサインが複数当てはまる場合は、お口の機能が少しずつ衰え始めているかもしれません。早めに歯科で確認することをおすすめします。
放置すると食べる力がさらに弱まり、食事内容も偏りやすくなります。その結果、栄養不足や筋力低下を招いて、全身の虚弱状態(フレイル)へとつながる可能性があります。
お口の衰えが全身の健康に影響するということは、意外と知られていません。だからこそ、早めに気づいて対策することがとても大切です。
歯とお口の健康を守る4つのポイント

① バランスの良い食事
特にたんぱく質を意識しながら、多様な食品をバランスよく摂ることが重要です。食欲が落ちてきた方や、やわらかいものばかり食べるようになってきた方は要注意。お口や全身の筋肉を維持するために必要な栄養をしっかりとる習慣をつけましょう。
② 適度な運動
歩く習慣を持つなど、無理のない範囲で体を動かすことが筋力維持や全身の健康につながります。お口の健康と全身の健康は深く関わっており、運動習慣はどちらにも好影響を与えます。特に運動不足を感じている方や、体全体の衰えが気になり始めた方は、まず散歩など取り組みやすいものから始めてみてください。
③ 社会参加・人との交流
友人と食事をしたり会話を楽しんだりすることは、お口の筋肉を使う自然なトレーニングになります。話す・笑う・食べるという動作が、お口の機能維持に直結しています。外出の機会や人と話す機会が減ってきたと感じている方は、地域のサークルや集まりに参加するなど、意識的に交流の場を作ることも大切です。
④ 毎日の口腔ケアと定期検診
毎日の丁寧な歯磨きはもちろん大切ですが、歯垢が固まった歯石は自分では取り除けません。歯ブラシでいくら丁寧に磨いても、一度歯石になってしまうと歯科医院での専門的な処置が必要になります。また、歯周病は自覚症状が少なく気づかないうちに進行することがあります。定期的なチェックで早期発見・早期対応することが歯を守る大きなカギになります。目安として、3〜4ヶ月に1回の定期検診を習慣にすることをおすすめします。
まとめ

食事を楽しみ、会話を楽しみ、いきいきとした毎日を続けるためにも、お口の健康はとても大切です。加齢に伴う変化やオーラルフレイルのサインを早めにキャッチし、バランスの良い食事・適度な運動・社会参加・口腔ケアと定期検診、この4つを意識することで、年齢を重ねても自分の歯を長く守ることができます。
「最近お口のことが気になってきた」という方も、まずは定期検診から始めてみてはいかがでしょうか。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
