予防歯科への意識の違い
まず大きな違いとして、海外では「予防歯科」に対する意識が非常に高いことが挙げられます。例えば、スウェーデンでは成人の80〜90%が定期的に歯科医院を訪れており、子どもに至ってはほぼ100%の受診率です。アメリカでも70%近い人が定期的に歯医者に通っているといわれています。一方で、日本の定期受診率はわずか6%程度。多くの人が「歯が痛くなったら歯医者に行く」という考えを持っているため、予防歯科の意識が低いとされています。
高額な治療費が予防歯科を促進
海外で予防歯科がこれほど進んでいる背景には、治療費の高さがあります。日本は国民皆保険制度があり、虫歯や歯周病の治療も保険適用で安く受けられますが、アメリカなどでは保険の種類によって治療費が大きく異なります。例えば、虫歯治療に10万円以上かかることも珍しくありません。そのため、多くの人が高額な治療費を避けるために、早い段階で予防しようとするのです。
また、海外では「歯並び」の重要性も高く評価されています。見た目を重視する文化があり、歯並びが悪いとビジネスや恋愛でも悪い印象を与えることがあるため、歯列矯正が一般的に行われています。日本では八重歯が「かわいい」とされることがありますが、海外では「ドラキュラのよう」とネガティブに捉えられることも多いです。
歯科治療の質と保険制度の違い
日本は国民皆保険制度のおかげで、基本的な歯科治療を保険内で安く受けることができます。しかし、海外では保険制度が国によって異なり、受けられる治療の内容や質が大きく変わることがあります。例えば、ドイツでは公的保険で受けられる歯科治療が限られており、より高度な治療を望む場合は民間保険に加入する必要があります。
一方、スウェーデンでは歯科治療の質が非常に高く、国民全体で歯の健康が重視されています。特に寒冷地では、硬い保存食を食べる必要があるため、歯の健康が生命維持にも直結する重要な要素とされています。このような背景から、スウェーデンでは予防歯科の意識が根付いており、歯のメンテナンスが非常に進んでいます。
世界から見た日本の歯科治療
日本の歯科治療は、世界的に見ると恵まれていると言えます。保険でカバーされる範囲が広く、基本的な治療は安価で受けることができるため、歯が痛くなればすぐに歯医者に行ける環境が整っています。しかし、海外に長期滞在する場合、現地での治療費が高額だったり、予約待ちが長かったりすることがあります。そのため、海外渡航前には日本で歯科治療を済ませておくことが推奨されています。
また、予防歯科が進んでいる国々では、年齢を重ねても多くの歯が残ることが報告されています。例えば、スウェーデンでは80歳で20本以上の歯が残っている人が多いのに対し、日本では予防歯科を受けていない人は10本以下しか歯が残らないことが多いです。
予防歯科の重要性
日本でも「8020運動」(80歳までに20本の歯を残そうという運動)が進められていますが、現時点ではスウェーデンのような成果は得られていません。予防歯科が普及することで、高齢者でも自分の歯で食事ができることが期待されています。
歯の健康を守るためには、3〜6ヶ月に一度の定期的なメンテナンスが理想とされています。年齢を重ねても自分の歯でおいしく食事を楽しむために、定期的な歯科受診を習慣化することが大切です。歯の健康は、全身の健康にもつながります。予防歯科の重要性を認識し、生涯を通して歯を大切にしていきましょう。
まとめ
日本と海外の歯科事情には、大きな違いがあります。特に予防歯科の意識や治療費の違いが、歯科医院の受診率や治療の質に影響を与えています。海外に住む予定がある人や、歯の健康に関心がある人は、海外の事情を理解し、早めに予防歯科を取り入れることが大切です。