「冷たい飲み物を飲んだら歯がキーンとしみた」「歯磨きのときにピリッと痛みを感じた」「虫歯じゃないのに違和感がある」こんな経験はありませんか?
一時的に痛みが出ても、しばらくするとスッと消える。この特徴的な症状がある方は、知覚過敏(象牙質知覚過敏症)かもしれません。多くの人が一度は経験する症状ですが、「放っておけば大丈夫」と油断していると、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
この記事では、知覚過敏の原因からセルフケアの方法、さらに歯科医院での治療法までわかりやすく解説します。
知覚過敏の仕組み
歯は外側から「エナメル質」「象牙質」「神経」という三層構造になっています。通常は硬いエナメル質が歯を守り、冷たいものや熱いものを口にしても痛みを感じません。
しかし、エナメル質がすり減ったり、歯ぐきが下がって歯の根が露出すると、象牙質がむき出しになります。象牙質の内部には象牙細管と呼ばれる細い管が無数に存在し、神経までつながっています。そのため外部の刺激が直接神経に伝わり、冷たい水や風が当たるだけで鋭い痛みが生じてしまうのです。
知覚過敏は、単なる一時的な違和感ではなく、歯の保護機能が低下したサインといえます。
知覚過敏の主な原因
知覚過敏を引き起こす要因はひとつではありません。日常の何気ない習慣や体の変化が関係していることもあります。ここでは代表的な原因を見ていきましょう。
強すぎるブラッシング
毎日の歯磨きは大切ですが、力を入れすぎると逆効果。特に歯の根元を強く磨くと、エナメル質やセメント質が削れ、象牙質が露出します。さらに、研磨剤の多い歯磨き粉を力強く使い続けるのもおすすめしません。
歯ぎしり・食いしばり
就寝中の歯ぎしりや日中の食いしばりによって、歯の表面に微細な亀裂が入り、刺激が伝わりやすくなります。ストレスや噛み合わせの不具合も悪化要因です。
歯周病や加齢による歯ぐきの後退
歯周病や加齢で歯ぐきが下がると、エナメル質に覆われていない根元部分が露出します。そこに冷たい飲み物や歯ブラシが触れるだけでしみる症状が出やすくなります。
自宅でできるセルフケア
知覚過敏の症状が軽い場合は、生活習慣を見直すことで改善するケースも少なくありません。自宅でできる代表的なケア方法を紹介します。
歯磨きの見直し
毛先の柔らかい歯ブラシを使い、鉛筆を持つように軽い力で磨きましょう。研磨剤の少ない歯磨き粉を選ぶのも効果的です。
知覚過敏用歯磨き粉の活用
市販の知覚過敏用歯磨き粉には、刺激の伝達をブロックする成分が含まれています。即効性はありませんが、継続使用で症状の軽減が期待できます。
生活習慣の工夫
酸味の強い飲食や極端に冷たい・熱いものの摂取は控えめに。ストレス対策で歯ぎしり・食いしばりを防ぐことも大切です。
歯科医院で行う治療
セルフケアで改善が難しい場合や症状が強いときは、歯科医院での治療が必要です。原因や程度に応じて、いくつかの方法が選択されます。
薬剤やフッ素の塗布
歯の表面をコーティングし、刺激を遮断します。初期の症状に有効です。
コーティングや詰め物
露出部分が大きい場合はレジンなどで補修する。見た目も自然に仕上がります。
レーザー治療
象牙質の感受性を抑え、短時間で処置可能です。痛みや出血も少なめです。
神経の処置
どうしても改善しない場合は神経を取ることも。ただし歯の寿命を縮めるための最終手段です。
放置するとどうなる?
「すぐ痛みが消えるから大丈夫」と放置するのは危険です。歯磨きが不十分になり、プラークや歯石がたまり、虫歯や歯周病を悪化させるリスクがあります。また、知覚過敏の背後に歯周病などの病気が隠れていることも少なくありません。
知覚過敏は、歯や歯ぐきからの小さなSOS。早めに対処することが、将来のトラブルを防ぐカギとなります。
まとめ
知覚過敏は、強いブラッシングや歯ぎしり、歯ぐきの後退といった日常的な要因から起こります。症状が軽いうちはセルフケアで改善できることもありますが、放置すると虫歯や歯周病のリスクが高まります。
「歯がしみる」サインを軽く見ず、正しいケアと早めの受診で、歯を長く健康に保ちましょう。